2011年06月05日

置屋物語 -花街を彩った人々-

こちらの本の舞台は福島県飯坂温泉。叔母の営む置屋に養子に入った筆者が、そこに籍を置いていた芸者さんたちを中心に、当時の花街や芸者さんたちの生活、生き方などを描いた本です。

時代は昭和初期から30年代くらいにかけての、芸者さんが一番華やかだった時代。地方の温泉地とはいえ、東京をはじめ様々な場所からお客さんが訪れては、芸者をあげて遊んでいたことがわかります。

さて登場する芸者さんたちですが、年齢も性格も芸者になった経緯も実に様々。そんな彼女たちの置屋での生活ぶり、お座敷でのこと、旦那との関係など、これまたそれぞれの個性豊かに描かれています。

芸者になりたくてなった人、売られてきた人、しっかり者で芸にも熱心な人、とにかくだらしない人。旦那と一生添い遂げる人もいれば、芸者の方から別れてしまう人、正妻になっても「奥さん」がつとまらなくて結局芸者に戻ってしまう人。芸者さんがいればその数だけ異なる生き方、エピソードがあるんだなあと改めて思いますが、当時の花街、芸者さんのことがかいま見えるとてもおもしろい内容です。写真も多数掲載されていますので、視覚的にも当時の芸者さんの姿を知ることができます。

本書の筆者ですが、養子とはいえ置屋の跡取りとして入ったわけではなく、また男性ということもあって、芸者や女将といった「当事者」とはまた違った視点からこの世界が見えていたのだと思います。かといってまったく外部の人間でもないから、中のこともある程度は見えているわけで。きれいなことも、そうでないことも。芸者たちの表の顔と裏の顔とのギャップや、女所帯のがさつさや(笑)。

だから変に入れ込みすぎたり、幻想をふくらませたりすることもなく、「当事者」ではないから必要以上に繕うこともなく、でも「身内」に対する親しみと情にあふれる文章は決して嫌みがなく。

筆者の置かれた特殊なポジションが生んだ距離感が、他の花街関連本とは異なる独特な雰囲気を生んでいるのだと思います。とにかく読みやすく、内容も興味深いものです。また一つ、別な視点から花街を見ることのできる本と言えるのではないでしょうか。




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タグ:飯坂温泉
posted by ぷにすけ | TrackBack(0) | 京都以外の花街の本