2010年01月17日

廓のおんな

金沢、東の廓で芸者、そして置屋の女将として生きた山口きぬさんの生涯を書いたノンフィクション作品です。

作者がきぬさんに聞き取りしたものを元にまとめているようですが、学術書のような堅さはなく、小説のように読みやすいです。全編に流れる金沢の街の風景、四季の情緒、登場人物の話す「なまり」が、全体に文学的な美しさを与えているような気がします。

もちろんきぬさんの人生もまた、小説のように劇的です。明治の代に身売りで廓にやってきて芸者になり、水揚げ、売れっ子芸者としての日々、旦那のある身で廓を飛び出し、恋人の元に走って京都で素人としての生活、やがてまた廓に戻って置屋の女将としての再スタート‥。

こうして並べ立てるとずいぶん激しい感じがしますが、先にも書いた、文章全体から受ける印象のせいか、決して扇情的な感じはありません。しかしそこからは、廓に生きる女性の哀愁、そして強さが伝わってきます。今の時代とは違う部分も多いとは思いますが、「廓で生きる」ということの一つの形を、きぬさんの人生に見ることができると言えるのではないでしょうか。

本の中には、置屋の女将、娼妓、置屋に住み込むお手伝いさんの女性、仕込みの女の子と、芸者以外にも廓に生きる様々な女性が登場します。明治から大正、戦争を経て戦後の新しい時代と、きぬさんの人生を通して、こうした廓に生きる様々な女性たちの生き方や、その変化も見ることができます。時代とともに変わりゆく廓と、そこに生きる女性たちの姿も見所の一つです。

廓の文化や風俗、様々な習慣、そこに生きる人たちの考え方や生き方、色々なものが詰まっています。単純に当時の廓の様子や風俗を知る上でもよい資料になりますし、一人の女性の一代記として読んでも十分におもしろいです。そして金沢の街の美しさ‥。読んでいると、行ってみたい思いが募ります。金沢に限らず、花街の文化に興味がある方なら読んで損はない一冊だと思います。



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タグ:金沢
posted by ぷにすけ | TrackBack(0) | 京都以外の花街の本
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